生き生きコラム
つい、「よいしょっ!」が出てしまうとき
 座っていて立ち上がる時など次の動作に移る瞬間につい「よいしょ」と言ってしまうことがありませんか。もともと、「よいしょ」という掛け声は、複数の人と重い物を動かすときなどタイミングを合わせるために使います。タイミングが合わないと上手く動かせなかったりあるいは危険が伴ったりするのでこれを避けるため人間が潜在的に持っている知恵の一つです。
 ところが歳とともに椅子から一人で立ち上がるのにも出てしまう「よいしょ」はなぜでしょう。若いときには何ともなかった自身の肉体重量つまり体重に対して、年齢とともに衰えた筋肉などの肉体の老化と自身の脳に記録されている行動速度に大きな差異が生じてきています。自分の意識として持っている肉体の動くスピードに実際に動く自身の肉体スピードが追いついていません。悲しいことに厳然とした老化現象のひとつです。
 この現象に対処するには、ふたつの方法があります。ひとつは、現実を認め自分の脳内メモリーを一旦消去して新たに肉体スピード・メーターを書き換えることです。つまり、一種の悟りの境地に入ることです。無理をせず肉体的なストレスを生じさせないようにして長生きをする秘訣です。もうひとつは、人間らしく悪あがきの挑戦をする生き方です。人体は体重比で約70%が水分であり、成分比の大きい順に分子レベルではタンパク質・アミノ酸・糖・ホルモン・コレステロール・ビタミンなどで構成され、原始レベルでは酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リンなどが加わって構成されています。人体をロボットに例えれば、動くための油圧ポンプは、筋肉であり油圧チューブは腱です。可動部の潤滑剤兼ショックアブソーバーに軟骨があり、躯体の構造体に骨があります。そしてカメラである目、集音マイクの耳、スピーカー兼燃料給油口である口、超小型発電所の心臓や燃料プラントの各内蔵、そしてこれらをコントロールしているマイクロコンピューターの脳とこれらを保護している外皮で構成されています。この機械を動かすのに大切な構成物タンパク質の4分の1を占めているのが繊維状のタンパク質、つまり、コラーゲンです。特に皮膚や腱、軟骨に多く含まれています。コラーゲンは、常に体の中で合成と分解を繰り返していますが、加齢とともに人体内部での合成量が急激に減少します。昔の化粧品の宣伝コピーに「お肌の曲がり角」と言ったクリームの広告がありましたが、まさにこのコラーゲンの生成量の下降線が始まる年齢と一致しています。(表は樹芸書房「コラーゲンと美容・健康を語る」白井邦郎著より)
 人体のコラーゲンの減少に伴い、軟骨が縮小するため関節痛や四十肩、五十肩の原因と言われています。また、筋肉量も減り同時に骨も弱ってきます。骨はリン酸カルシウムがコラーゲンの周りに規則正しく組み合わさるように並んでいます。いくら、カルシウムを摂取してもコラーゲンがないと体外に排出されてしまいます。コラーゲンには接着剤の役割があり、接着剤がないと加齢によって損傷するなど消耗した細胞部品を取り替えて補修することができません。どんどん見窄らしくなって骨祖しょう症などになることがあります。人体の各関節にある軟骨の50%はコラーゲンでできています。潤滑油が切れるとよく動かなくなるのと同様に変形するなどして痛みを伴います。いわゆる関節痛です。
 では、減少を続けるコラーゲンに対してどのようにすれば良いのでしょう。その方法は、体外から摂取するしかありません。美容では注射で補給したりあるいは化粧品から直接皮膚に吸収させるなどの手法がとられています。しかし、体内には食べ物として摂取するのが手軽で簡単ですが、料理から取るとなるとまた、大変な労力を要します。代表的料理としては、煮魚の「にこごり」があります。魚に含まれるコラーゲンが加熱溶出した物でゼラチン物質です。常温で固化しています。他にも牛テール料理、豚足料理、ウナギ料理などが上げられますが、どれも高カロリーなものです。肌は艶々、節々の痛みはなくなり元気いっぱいと言いたいところですが、メタポリック・シンドロームや高血圧症にご注意となってしまいます。
 そこで、「コラーゲンペプチド」と呼ばれている健康食品がお勧めです。ほとんど100%に近いタンパク質のみで1日の必要摂取量に占めるカロリーが12kcal程度と極めて低く気にする数値ではありません。コラーゲンそのままを食べても高分子のためほとんど人体に摂取されません。高分子を分解し低分子化すると図のようにゼラチン、コラーゲンペプチド、アミノ酸と分解され、水に溶けやすく人体に吸収されやすくなります。
現在市販されている「コラーゲン」と呼ばれている製品は、ほとんどがこのコラーゲンペプチドを主原材料としています。このコラーゲンの原料は、動物の皮脂または魚の鱗や皮から作られています。無味無臭で錠剤やパウダー状のものがあり、パウダー状の製品は、家庭で手軽に料理に加えても味が変わらないため、人気を博しています。また、1日1人あたりの必要摂取量に対するコストが50円から60円と廉価なため、急激に販売量が増えています。日本人は、魚に親しみがあるため、豚皮から抽出したものより、魚から抽出したコラーゲンに人気があるようです。
コラーゲンは、老化防止薬だと言われていますが、あくまでもサプリメントです。健康維持には、適切な運動とともにバランスの良い食事が必要であることは言うまでもありません。家庭の調理にコラーゲンを添加することで無意識の中でこれを補うことができます。年齢の若いうちから摂取に心がけることが大切なのです。
「無意識に、よいしょがでたら、コラーゲン」―――――おそまつ!!
雑学研究家 和 田 国 郎

:健康をテーマに何でもライター和田国郎が連載します。だいたい月に1回くらい更新する予定です。

19年6月号